2話

今日も外回りの営業か…
行きたくないなぁ…

仕事してるふりして
どうやってサボろうかな。

いつか宝くじ当てて、
早くこんな会社辞めるんだ。

毎日そんなことを考えていました。

朝早くに朝礼に出て、
営業会議を終えると
ホワイトボードにウソの訪問先を書いて

「行ってきまーす。」

車通りが少ない木陰に車を止めて、
数時間営業のノウハウ本や
自己啓発本を読む。

努力しないでうまく行く方法がないか、
そんな魔法をいつも望んでいる
ダメ人間。

自分はできるやつだと信じていながらも、
なかなか行動が続かない。

本を読んでなんとなく
モチベーションが上がって
よし、仕事をするぞ!と思っても
その気持ちは一瞬だけ。

すぐにまたどうやってさぼろうかな?

そんな毎日を繰り返していたある休日、
大学時代のOBが集まる機会があった。

・・・・・・・・・・・

青山のオシャレな
レストランバーで、久しぶりの面々。

懐かしい話と共に、
お互いの仕事の話で盛り上がる。

先月の給料これだけなんだぜ?
やってらんねーよな。
おまえんとこは休みが多くていいよなー
オレも転職しようかなー。

そんなくだらない会話が飛び交う中、
ふと窓の方に目をやると、
一人の可愛い女の子が
ちょうどナンパされている瞬間だった。

こんな子とやれたらいいのにな…

そんな下衆なことを考えていると、
声をかけていた男があっさりスルーされ、
彼女が一人になった。

これはチャンスかもしれない!

と声をかけると、
意外にも彼女はニコニコと
楽しそうに話してくれる。

日々のキャバクラ通いも
無駄じゃなかったな、
自分の会話もなかなか
イケてるんじゃないの?

そんなことを思いながら
彼女のことを観察すると、

キラキラした大きな目、
モデルさんのような小さな顔に
男を惹きつけるスタイルに、
すいこまれるような笑顔。

それだけじゃなくて、
どことなく気品もある…

どうも普通の人とは違う
オーラがあるなぁ

彼女によく思われたくて、
自分は将来、起業して、
大きな人間になりたいんだと
ミエを張った。

すると、彼女がふと、
私に向かってこう聞いてきた。

へー、すごいじゃん。

なんで今すぐしないの?

いつするの?

いつ、やりたいから、やるに変えるの?

何が原因で今はそうなってないの?

うっ。

答えに詰まっていると、彼女は続ける。

どうしようもないね、あなた。

そんな風にウソついてばっかりで、
毎日楽しい?

ビクンとした。

身体中が熱くなって
ムカッとする気持ちと共に
自分の中にある本質に触れられた気がして
心臓のドキドキが止まらなかった。

悔しかったから、
思いっきり見栄を張って、
自分はすごいんだということを見せたい。

だけど、どんな嘘をついても
彼女には見透かされる。

そんな気がしてやめたんだ。

自分の弱さを見せるのは
とても嫌だったけど、
思い切ってプライドを捨ててみた。

ウソつこうかと思ったけど、
正直に言います。

じつは、君の言うとおり。

本当は自分はどうしようもないやつで、
よくなりたいって思うんだけど、
どうしたらいいか分からないんだ。

君はなんだか他の人と
違って見えるけど、
普段は何をしている人なの?

話を聞くと彼女は
元々モデルをやりながら
銀座の高級クラブで
働いていることが分かった。

クラブに来る大物たちとつながって
その人たちからいろんな人生勉強をして、
ビジネスを立ち上げたり、 投資を覚えて
22の若さで7~8億円の資産を作ったこと。

その資産を1円残らず
貧しい国に寄付をしたこと。
(後日その証拠の新聞記事も見せてくれた)

彼女の話のすべてが自分とはケタが違う、
今までに出会ったことのない人種に、
あまりのすごさに、圧倒された。

素直にこの子と関わりたい…

成功の秘訣を教えてもらって
自分の人生を変えたい…

そう思って、勇気を振り絞って切り出した。

自分がこれから 何をすればいいか、
良かったらアドバイスを くれないかな?

っていうか、

で、弟子にしてくれませんか?

悔しいけど、年下に向かって敬語を使った。

「いいわよ」

あっさりすぎる答えに戸惑いながら
何も言えずにいると、
彼女は続けてこう言った。

「じゃあ、とりあえず50万円ね」