4話

毎週火曜日の朝 8:00

都内のある高級ホテルのラウンジ。
それが彼女と会う日程と場所になった。

休みの日の朝早く。

しかも、住んでいるのが水戸だから、
そのホテルまで行くのには
6時の電車に乗る。

これだけでも、
今までの人生から考えたら
ありえないことだった。

都内屈指のホテルのラウンジには
朝早くからビジネスマンが行き交っている。

そこにいるだけで、
なんだか高級な人間になったような
そんな錯覚に陥った。

挨拶と雑談もそこそこに、
とつぜん彼女が切り出した。

行動したい時に、行動できない、
続かないことってあるじゃない?

その原因ってなんだかわかる?
モチベーションかしら?
本当にやりたいことが見つからないから?

行動して失敗するのが怖いから、
かな…

彼女は私の答えを無視して
次の質問をしてきた。

じゃあ、世の中のほとんどの人が
お金持ちになれなかったり、
夢を叶えられないのは何が原因だと思う?

人間関係とかパートナーシップが
うまくいかない人も多いじゃない。

その原因はわかる?

立て続けに質問されて、
頭は真っ白。

じつは、今までの質問の答えの根本は、
多くの場合「あることが原因」なの。

それはね…

あ、その話の前に…

と、 そこまで話して
彼女は話題を変えた。

じゃあ、人生を変える
大きな力って何だと思う? …

これは覚えてるぞ!
け、決断の力?

「はい、当たりー。」

ほとんどの人間は、決断するには
材料が必要だと思ってるの。

お金さえあればできるのに、とか。
時間さえあればできるのに、とか。
人脈さえあればできるのに、とか。
自信があれば…とかね。

でもね、ほとんどの場合それは逆。

じつは決断が先なのよ。

決断をするからお金が集まる。
決断をするから時間を作るようになる。
決断をするから応援者が現れる。

そういうことなの。

例えば、あなたは私から
成功するための ノウハウとか
考え方を学ぼうって決断したよね?
そしたら、何が起きた?

決断したから私と今ここにいるの。

もちろん、すべてが決断通りに
行くとは限らない。

だけど、決断からすべてが
始まっているのは確かよね?

東大を出ていたり、
東大に入っている人は
なんで東大に入れたの?

東大に入ろうってどこかで決断したからよ。

ディズニーランドに行った人は、
どうしてディズニーランドに行けたのかしら?

それはね、「行く」って
決断したからに他ならないのよ。

あなたが今の会社で働いているのも、
どこかで、会社に入ろうって
決断して選択したから。

じゃあ、成功して豊かになっている人は?

どこかでそうなろうって、決断したから。

とっても単純でカンタンなことだけど、
これに気づいていない人が多すぎるの。

本当は誰だって毎日毎日
決断を繰り返しているのにね。

じゃあ、なんで
お金持ちになろうって
そういうことに関しては
みんななかなか決断できないんだと思う?

お金持ちになる人って
どういう人が多いのかな?

なんであなたは中途半端な人間なの?

ーーくそう。一言多いんだよ。
それが分かってりゃ
今ごろこんなレッスン受けてないし。ーー

わ、分からないデス・・

いいわ、じゃあ今日は初めてだし、
お互いの身の上話しでもしよっか。

ーあれ?質問の答えは?ー

うちの思惑を無視して彼女は話し始めた。

私の家族は両親とお姉ちゃん。

私の両親は私が赤ちゃんの頃
大きな交通事故に巻き込まれて 死んだみたい。

お姉ちゃんは実の子で、私は養子なの。

小さい頃から、私のことを
もらってくれた両親は
お姉ちゃん以上に
私のことを可愛がってくれた。

それはもしかしたら、
いつか私が本当の子供じゃないことを
気にするんじゃないかと
気を遣ってくれたからかもしれない。

でも、一番すごかったのは
両親はいつでも私たちに向かって

「あなたたちには無限の可能性がある。
どんな時でも できると信じて
思いっきり行動しなさい。大丈夫だから」

って言い続けてくれたことかな。

本当にいくら感謝してもしきれないわ。

私は、今の両親にこれから先も
ずっと幸せでいて欲しいから、
自分が心から幸せでいられるように
たくさん努力してきたんだ。

こいけんは家族とは仲いい?

そう聞かれて、
久しぶりに家族のことを考えた。

そして、あまり人に
話したことのない話をした。

じつは、母親とは
中学の時から仲が悪いんだ。

最近はほとんど口をいないこともないし、
2年も実家には帰っていない。

反抗期という訳じゃないけど、
深く話すこともまったくない関係だった。

小さい頃、悪いことをして
怒られる時はいつも決まって母親だった。

おとんは 7 年前に亡くなってる。

けっこう固い仕事だったのに関わらず
自由人だし社交的で友達も多かった。

家の食卓でもいつふざけて
くだらないダジャレばかり。

尊敬はしていたけど、これまた
あまり深い話をしたことはなかった。

妹は、自分やおとんと違って
外に出たがらない。

いつもテレビを見ていて
どちらかというと内向的だ。

そんな妹を見ていると
イライラする時もあった。

そんなことを伝えると、彼女は
「ふーん、幸せな家庭だね」
と笑って言った。

幸せ?

あんまり家族が一丸となっている状態を
経験したことがなかったから、
そんな風には考えられなかった。

でも、それがどうかしたのさ?

早く、もっと成功するための
すごい方法とかを教えて欲しいんだけど…

彼女はそんな私の思惑を
無視してこう言った。

じゃあ、あなたに一つ課題を出します。

確かこいけん、
もうすぐ誕生日だったよね?

うん。

じゃあ、次に会う時までに
誕生日があるから、
誕生日に自分の母親に直接会って、

「今までごめんなさい」と
「産んでくれてありがとう」を
言ってきて。

は!? え!?

なんだよその課題!

そんなことよりも、
早くお金持ちになる方法とか、
ビジネスを立ち上げるノウハウを
勉強しにきてるんだぞ?

ていうか、
おかんにそんなこと
言えるわけないじゃん・・

そう言おうとしたけど、

彼女への弟子入りのルール 1
【どんなことでも素直に受け入れて実践する 】

っていうのを思い出してぐっと我慢した。

はい、分かりました…

じゃあ、次回は
再来週の火曜日、またここで。

今日あなたにした質問に
答えも考えておいてね。

必ず、なにがあっても実践すること。

そういって、彼女は
「ごちそうさま」 と言って
伝票を置いて去っていった。

こら、金払ってけよ…

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